2022年1月22日日向灘の地震(M6.6)によるプレート境界への影響(東北大学災害科学国際研究所 遠田晋次)

今回の日向灘の地震(M6.6, Mw6.3)は沈み込んだフィリピン海プレート内部で発生した地震とみられます.メカニズム解(断層のズレのタイプ)は正断層型です(気象庁,2022).想定している日向灘沖地震とは異なります.このタイプの地震をスラブ内地震といいます.昨年2月13日に福島・宮城に最大震度6強の揺れをもたらした福島県沖の地震(M7.3)もスラブ内地震でした(こちらは逆断層型,気象庁,2021).しかし,日向灘は南海トラフ巨大地震の震源の一部に含まれますし,日向灘単独でもM7を超える地震を起こします.今後の地震活動が気になるところです.

ここでは,今回の日向灘の地震による陸側プレート/フィリピン海プレート境界への影響を見積もるため,プレート境界面への応力変化を計算しました(具体的には,クーロン応力変化(ΔCFF,例えば King et al., 1994),図1).

その結果,震源域である約40km以深ではプレート境界の動きを促進しますが,それよりも浅い部分では抑制する(負のΔCFF)ことがわかりました.南海トラフ沿いの巨大地震の震源(断層がズレ動き始める部分)は10 km~30 km程度です.したがって,応力伝播の視点からは,南海地震やM7級の日向灘地震を誘発する可能性は低いと思われます.ただし,地下での流体の動き,余震活動の進展など,予測不可能な要素もあります.決して楽観視して良いものではありません.

また,スラブ内地震は通常のプレート境界型地震と比べて余震が長く続く傾向があります(遠田,2021,地震ジャーナル).日本海溝沿いのスラブ内地震でもその傾向が鮮明です.今後も余震には注意が必要だと思います.

今回の計算結果は暫定的なもので,あくまで参考として提示するものです.責任は負いかねます.

図1.1月22日日向灘の地震によってプレート境界面へかかるクーロン応力変化(上段).暖色部分はプレート境界の動きを促進,感触部分は抑制.カラーバーは±1bar, 0.1MPaで飽和させているので,極近傍は数bar以上の変化.プレート境界の一部を取り出して計算したことに注意.中段:プレート境界面の3D形状,下段:応力計算で想定したプレート境界面の断面とその傾斜.